AIを用いたOCR「AI-OCR」の代表的な7サービスを紹介

OCR(Optical Character Recognition)とは、紙の帳票やPDFに記載された文字情報をテキストデータに変換する技術です。従来のOCRは、あらかじめ決められたフォントやレイアウトを前提にしたパターン認識が中心で、少しでもかすれや傾きがあると精度が下がりやすいという課題がありました。
しかし近年は、機械学習や深層学習を用いたAIベースのOCRが登場し、文字の形そのものや周辺のレイアウト構造を学習することで、手書き文字や非定型レイアウト、軽度なかすれ・歪みを含む帳票でも、従来より高い精度で処理できるようになってきました。
名刺、請求書、申込書、FAX注文書など、紙ベースの運用が残る現場では、入力作業の負荷や転記ミスを減らす手段として、こうした「AI-OCR」が注目を集めています。
現在では、多様なAI-OCRサービスが提供されており、用途や強みによって選択肢が分かれます。代表的なものとして、以下のようなサービスが挙げられます。
① SamuraiAI(サムライエーアイ)
② DX Suite(ディーエックススイート)
③ SmartRead(スマートリード)
④ DEEP READ(ディープリード)
⑤ LINE WORKS PaperOn(ラインワークス ペイパーオン)
⑥ AnyForm OCR(エニーフォーム・オーシーアール)
⑦ eas(イース)
本記事では、ワークフロー型AIエージェント「SamuraiAI(サムライエーアイ)」の開発を手がける株式会社Kivaに所属する筆者が、各サービスの特徴を比較しながら、AI-OCRの種類・活用シーン・導入時に押さえておきたいポイントについて詳しく解説します。
また、弊社が提供する「SamuraiAI」を用いて、実際に名刺OCRのワークフローを試した際の体験もあわせて紹介しますので、実務的な視点からAI-OCR導入のイメージを持ちながら、自社の業務にどのように取り入れられるかを検討する際の参考として役立つ内容になるはずです。
7つの代表的なAI-OCRサービス
まずは、国内外で評価の高い7つのサービスを紹介します。ここでは、「純粋なAI-OCR製品」「ワークフロー・連携型/BPO併用型」「AI-OCRを起点に業務自動化を展開するエージェント型」の3つのカテゴリに整理し、それぞれの特徴・料金・連携性能を比較します。
◆AI-OCRサービスの比較表
サービス名 | 提供形態 | 特徴 | 連携・API/RPA可否 | 最低料金プラン | 無料プラン/トライアル |
|---|---|---|---|---|---|
① SamuraiAI | ワークフロー型AIエージェント | AI-OCRを起点にデータ登録までを自動化するワークフロープラットフォーム。 名刺や請求書などの入力作業を効率化できる。 | 各SaaS連携可能 | 月額:0円〜 | 有 |
② DX Suite | クラウド | 高精度な手書き・非定型帳票の認識に対応。AI学習によりテンプレート不要で運用可能。 | API・CSV対応 | 初期費用:0円〜 月額:30,000円〜 | 有 |
③ SmartRead | クラウド/オンプレミス | 活字・手書き文字の高精度認識に加え、確認画面やRPA連携機能を備える。 | API・RPA対応 | 年額:360,000円〜 | 有 |
④ DEEP READ | クラウド/オンプレミス/準オンプレミス | 手書き・非定型帳票に強く、辞書・正規表現・APIを利用した柔軟なデータ化が可能。 | API対応 | 初期費用:0円〜 月額:50,000円〜 | 有 |
⑤ LINE WORKS PaperOn | SaaS(LINE WORKS連携) | 書類の受取から修正・変換・システム連携までを1ツールで完結。モバイル取込にも対応。 | CSV対応(API連携拡張を予定) | 月額:30,000円〜 | 有 |
⑥ AnyForm OCR | クラウド/オンプレミス | 既存帳票をそのまま利用できるテンプレート設計型。帳票デザイナーで自由にレイアウト定義が可能。 | RPA・API対応 | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
⑦ eas | サービス(AI-OCR+人手補正) | AI-OCRとクラウドオペレーターによる確認を組み合わせ、最大99.98%の精度を実現。 | API対応 | 初期費用:20,000円〜 月額:50,000円〜 | 有 |
各サービスについて詳しく解説します。
① SamuraiAI(サムライエーアイ)
AI-OCRを単体の機能ではなく、業務フロー全体を自動化する起点として扱うのが、ワークフロー型AIエージェント「SamuraiAI」の特徴です。名刺や請求書などをアップロードすると、AI-OCRで文字を読み取り、企業情報を自動収集し、CRMやスプレッドシートなど複数のSaaSに登録まで行います。
ブラウザ操作を自動化できるため、API連携に対応していないSaaSにもデータを転送でき、RPAのような使い方も可能です。帳票処理にとどまらず、商談管理・顧客管理・受発注処理など、OCRの後に必ず人が行っていた登録作業を削減できる点が最大の魅力といえます。
◆SamuraiAIの料金プラン
・Personal:無料(無料クレジット超過分は従量課金)
・Business:月額29,800円
・Enterprise:要問い合わせ
② DX Suite(ディーエックススイート)
DX Suiteは、3,000社の導入実績を誇る、日本国内で最も導入実績の多いAI-OCRサービスのひとつです。クラウド上に帳票をアップロードするだけで、活字・手書き文字・非定型レイアウトまで高精度に読み取り、CSVやAPI経由で他システムへデータを連携できます。
特徴的なのは、帳票レイアウトの設定工数を抑えられる自動抽出機能です。AIが項目位置を学習して自動的に認識領域を特定するため、従来のOCRのように座標を細かく指定する必要がありません。
また、クラウド版に加え、セキュリティ要件の厳しい企業向けにオンプレミス型の「AI inside Cube」も提供しています。導入形態を柔軟に選べる点も、エンタープライズ利用で支持される理由です。帳票種別を問わず、多様な業務プロセスに対応できる汎用型AI-OCRの代表格といえます。
◆DX Suiteの料金プラン
・DX Suite Lite:初期費用0円/月額30,000円
・DX Suite Standard:初期費用200,000円/月額100,000円
・DX Suite Pro:初期費用200,000円/月額200,000円
③ SmartRead(スマートリード)
SmartReadは、AIによる仕分け・読み取り・書き出しまでを一体で行います。手書き・活字を問わず、自社評価で認識率99.2%とする高精度の読み取りを打ち出しています(すべての文書で保証するものではありません)。
APIやRPAとの連携性も高く、読み取ったデータをCSV/Excel出力や基幹システムとの接続に活用できます。
さらにSmartRead PLUS+では、「ヒューマン・イン・ザ・ループ(専門オペレーター確認)」を組み合わせ、実務品質のデータを提供するハイブリッド運用が可能です。大手金融機関実績やBPO的な補助まで含めて、現場負荷を抑えながら安定運用を狙えるのが特徴です。
◆SmartReadの料金プラン
・スモールプラン:年額360,000円
・スタンダードプラン:年額960,000円
・エンタープライズプラン:年額2,400,000円
・オンプレミスプラン:年額2,400,000円~
④ DEEP READ(ディープリード)
DEEP READは、ディープラーニングを用いた手書きに強いAI-OCRです。総認識枚数5.6億枚超(2023年3月時点)の実績を持ち、医療・金融・学校法人など幅広い業種で活用されています。
導入形態は「クラウド型」と「オンプレミス型」に加えて、顧客の拠点と顧客アカウントのAWSを回線で接続する「準オンプレミス型」を選べ、厳格なセキュリティ要件にも合わせやすい構成を提供します。
辞書機能や正規表現、単語置換といった現場向けの補正系を備え、読み取り精度は約98%、コスト削減率約93%を標榜。業務量最大70%削減も公式にうたっており、大量処理やBPO業務にも適した設計といえます。
◆DEEP READの料金プラン
・クラウド型:初期費用0円/月額50,000円〜
・オンプレミス型:初期費用3,000,000円/月額400,000円〜
・準オンプレミス型:初期費用3,000,000円/月額400,000円〜
⑤ LINE WORKS PaperOn(ラインワークス・ペイパーオン)
LINE WORKS PaperOnは、「受け取る・修正する・変換する・連携する・保管する」という帳票処理の一連の流れを一括で行えるAI-OCRプラットフォームです。2025年10月に正式提供が開始されたばかりで、すでにLINE WORKS利用企業を中心に導入が広がっています。
最大の特徴は、LINE WORKSとの親和性です。現場スタッフがスマートフォンで書類を撮影し、そのままPaperOnに送信するだけで、AI-OCRが文字を自動認識してデータ化。結果はブラウザ上で確認・修正でき、CSV出力や外部システムとの連携にも対応しています。
また、PaperOnでは生成AIとAI-OCRを組み合わせた項目抽出を実現しており、紙面から必要な情報を高精度に読み取って自動変換します。API連携も視野に入れており、今後さらに連携機能の拡張が見込まれています。クラウドベースのSaaSとして提供されるため、初期設定の手間が少なく、セキュリティ要件に応じた運用も可能です。
◆LINE WORKS PaperOnの料金プラン
・ライト:月額30,000円
・スタンダード:月額50,000円
・アドバンスト:月額100,000円
⑥ AnyForm OCR(エニーフォーム・オーシーアール)
AnyForm OCRは、特許技術「WOCR」を搭載したテンプレート設計型AI-OCRです。WOCRは、AI型と非AI型の2つのOCRエンジンを併用して認識を行い、結果が一致したデータを高信頼情報として採用、不一致の場合のみ目視確認を促します。
この仕組みにより、確認作業を最小限に抑えながら、信頼精度99.97%(活字の日本語・英数字が対象)という高い正確性を実現しています。
専用ツール「AnyForm OCR デザイナー」を使えば、帳票レイアウトを自動認識し、ドラッグ操作で読み取りエリアや文字種・桁数などを指定可能。現場担当者でも簡単にテンプレートを作成できます。また、RPA連携(UiPath、Autoジョブ名人、AutoMateなど)に対応し、OCRで抽出したデータを基幹システムに自動登録するなど、入力業務全体の自動化も実現可能です。
◆AnyForm OCRの料金プラン
要問い合わせ
⑦ eas(イース)
easは、AI-OCRとクラウドオペレーターを組み合わせた書類データ化サービスです。AIによる文字・項目認識を起点に、45万人規模のクラウド入力オペレータが確認・補正まで対応することで、理論値で最大99.98%のデータ化精度を実現しています。
運用形態は「SaaS/BPaaS/BPO」の3コースを選択可能で、自社内でOCR運用したい企業から、書類収集・入力まで含めて委託したい企業まで、幅広い要件に対応します。
連携機能も豊富に設計されており、APIによるSaaSサービス連携やRPAとの接続もオプションとして提供。さらに、セキュリティ面も「AWS導入」「入力画像の項目分割処理」「オペレータによる他情報との紐付け不可」といった万全の対策が講じられています。
◆easの料金プラン(SaaSコース)
・プランA:初期費用200,000円/月額50,000円
・プランB:初期費用200,000円/月額75,000円
・プランC:初期費用200,000円/月額150,000円
※BPaaSコース、BPOコースは要問い合わせ
実際にSamuraiAIを利用して名刺OCRを検証
ここでは、AI-OCRの具体的な挙動を把握するため、実際にSamuraiAIを用いて名刺画像の読み取りを行いましたので、その処理手順と結果を紹介します。
SamuraiAIは「ワークフロー型」のAIエージェントであるため、まずは名刺読み取り用のワークフローを作成しました。
◆作成した主なワークフロー

① 名刺画像をアップロード
② 記載内容の抽出
③ 抽出した情報を基にしたメール文章の生成
ここまでを一連の流れとして処理する構成です。画面上でノードを配置し、順に接続するだけで作成でき、特別な設定を必要としない点が特徴です。
次に、実際に画像をアップロードしていきます。今回は、スマートフォンで撮影した筆者自身の名刺画像を使いました。自室で手持ちによる撮影のため、画像にはわずかな傾きや光の反射がありましたが、そのままアップロードしました。
画像のアップロードは、指定されたフォームにファイルを選択して読み込ませるだけで完了します。操作は直感的であり、名刺画像を選択するだけで処理の準備が整います。
◆画像のアップロードフォーム

実行後、名刺に記載されている会社名、部署名、役職、氏名、メールアドレス、URLなどの情報が自動的に抽出されました。
また、あらかじめ設定していたテンプレートに基づき、抽出した情報を用いた宛名入りのメール文章も同時に生成されます。処理は数秒で完了し、抽出結果と生成された文章が結果画面に表示されました。読み込み精度は高く、抽出された情報には一字の齟齬もありませんでした。
◆生成結果

今回の検証では、画像のアップロードから名刺情報の抽出、メール文章の生成までが一連の流れとして自動化されていることを確認しました。OCR処理後の実務に直結する工程まで含めて自動化できる点は、SamuraiAIの大きな特徴であり、名刺入力業務の効率化に寄与するものといえます。
名刺OCRや帳票を起点とした業務自動化を検討している場合、SamuraiAIは無料プランで基本的なワークフローを試用できますので、操作感や処理速度を確認するうえで有効な選択肢です。
AI-OCRの3つのタイプ
AI-OCRは、「どのような帳票を対象とするか(汎用か業務特化か)」 と 「レイアウトが定型か非定型か」 の組み合わせによって、一般的に次の3つのタイプに分類されます。
タイプ① 汎用×定型フォーマット型
タイプ② 汎用×非定型フォーマット型
タイプ③ 業務特化×非定型フォーマット型
それぞれの特徴について、以下に解説します。
タイプ① 汎用×定型フォーマット型
汎用×定型フォーマット型は、扱う帳票の種類は汎用的ですが、レイアウトがあらかじめ決まっている定型帳票を対象とするタイプです。事前に「どこに何の項目が記載されているか」をフォーマットとして定義し、その定義に基づいてAI-OCRが文字を読み取ります。
◆汎用×定型フォーマット型の主な特徴
請求書・注文書・申込書など、帳票の種類自体は幅広く扱えますが、フォーマットが決まっているほど安定した精度を発揮しやすいです。
項目の位置や書式をあらかじめ定義するため、定義済みの帳票に対しては高い認識精度で処理しやすい一方、新しい帳票が増えるたびにフォーマット定義の作業が発生します。
テンプレート設計の工数はかかりますが、その分、安定運用しやすいというメリットがあります。
◆汎用×定型フォーマット型が向いているケース
・取引先や社内で利用する帳票のフォーマットがほぼ固定されている場合
・一度テンプレートを作り込んでしまえば、同じ帳票を大量に処理するような業務
・「設計の手間がかかっても、読み取り結果の安定性を優先したい」というニーズが強い現場
タイプ② 汎用×非定型フォーマット型
汎用×非定型フォーマット型は、対象となる帳票の種類は汎用的でありながら、レイアウトが統一されていない非定型帳票を扱うタイプです。AIが帳票のレイアウト構造を自動的に解析し、「どこに何が書かれているか」を推定して項目を抽出します。
◆汎用×非定型フォーマット型の主な特徴
帳票ごとに座標や項目位置を手作業で定義しなくても、AIが自動的にレイアウトを解析して項目を読み取ります。取引先ごとにフォーマットが異なる請求書や領収書など、レイアウトのバリエーションが多い帳票に対応しやすい方式です。
一方で、十分な学習データがないフォーマットや、極端にレイアウトが崩れた帳票では精度が低下する可能性があり、辞書機能や正規表現、追加学習などによるチューニングが重要になります。
◆汎用×非定型フォーマット型が向いているケース
・取引先や部門ごとに帳票の形式がばらばらで、すべてにテンプレートを用意するのが現実的ではない場合
・多数の帳票パターンを扱っており、テンプレート設計よりも「導入スピード」や「運用負荷の軽減」を重視したい場合
・将来的に帳票パターンが増えることを見込み、柔軟に対応できる仕組みを整えたい場合
タイプ③ 業務特化×非定型フォーマット型
業務特化×非定型フォーマット型は、対象とする帳票を特定の業務領域に絞り込んだうえで、非定型フォーマットに対応するタイプです。例えば「請求書専用のAI-OCR」や「経費精算書専用のAI-OCR」など、用途を特化したサービスが該当します。
◆業務特化×非定型フォーマット型の主な特徴
対象業務を限定する代わりに、その領域で頻出する帳票レイアウトをあらかじめ学習しており、実務で扱うパターンに対して精度や運用しやすさを高めやすい設計になっています。
多くの場合、単純な文字認識にとどまらず、会計システム向けの仕訳データや、ワークフローシステム向けの項目データなど、業務システムとの連携までを前提にした機能を持っています。
汎用性は低く、対象外の帳票にはそのまま利用できないケースが多いものの、対象業務に限って見れば導入効果を出しやすいタイプです。
◆業務特化×非定型フォーマット型が向いているケース
・経理、購買、経費精算など、特定の業務プロセスにおいて、大量の帳票処理を集中して効率化したい場合
・既存の会計ソフトやワークフローシステムと連携し、「OCR → 自動仕訳 → 承認」といった一連の流れを整えたい場合
・まずは特定の業務領域から段階的にAI-OCRを導入したい場合
このように、AI-OCRといっても「汎用か業務特化か」「定型か非定型か」によって性格が大きく異なります。本記事で紹介した各サービスも、この3つのタイプのどこに位置づけられるかを意識しながら比較することで、自社に適したAI-OCRの方向性を整理しやすくなります。
AI-OCRの主な活用シーン
AI-OCRは単に「紙をデジタル化する技術」ではなく、その後のシステム登録やワークフローと組み合わせることで、さまざまな業務で活用することができます。ここでは、代表的な活用シーンを整理して紹介します。
名刺管理・顧客情報の登録
AI-OCRの最もイメージしやすい活用シーンが、名刺の読み取りと顧客情報の登録です。営業担当者が受け取った名刺をスマートフォンで撮影し、AI-OCRで会社名・氏名・部署・役職・メールアドレスなどを抽出することで、手入力の工数を大幅に削減できます。
さらに、抽出した情報をCRMや名刺管理ツールに連携することで、「名刺の山を入力するだけで終わる作業」から「顧客データベースを継続的に更新するプロセス」へと変えることができます。名刺の入力作業は単純でありながら時間を取られやすいため、AI-OCRとの相性が良い代表的な領域です。
請求書・注文書・納品書などの経理・購買業務
請求書や注文書、納品書などの帳票は、件数が多く、入力ミスが発生しやすい領域です。AI-OCRを活用することで、取引先名、金額、日付、明細、振込先情報などを自動で抽出し、会計システムや販売管理システムに連携できます。
汎用×定型フォーマット型や汎用×非定型フォーマット型のAI-OCRを組み合わせることで、取引先ごとに異なる形式の帳票にも対応しやすくなります。
業務特化型のAI-OCRを利用するケースでは、仕訳データの生成や、支払・入金予定表の作成までを含めて自動化することも可能です。この利用ケースでは、「入力作業そのものの削減」と「ミス防止」の両方の効果が期待できます。
申込書・申請書・アンケートなどの紙フォーム
店舗や窓口、イベント会場などでは、いまだに紙の申込書や申請書、アンケート用紙が利用されているケースが多くあります。これらの紙フォームをAI-OCRで読み取り、顧客情報や回答内容をデータベースに取り込むことで、集計・分析にかかる時間を短縮できます。
特に、フリーテキスト欄やチェックボックスが混在するフォームでは、AI-OCRとテキスト解析を組み合わせることで、顧客の声やニーズを構造化されたデータとして蓄積しやすくなります。
紙で受け付けざるを得ない現場でも、バックヤード側ではデジタル前提の運用に近づけられる点が大きな利点です。
FAX・郵送で届く注文書・見積依頼
BtoBの取引では、FAXや郵送による注文書・見積依頼が依然として一定数存在します。AI-OCRを使ってFAXの受信データやスキャン画像から内容を読み取り、受注管理システムや在庫管理システムに自動登録することで、担当者の転記作業を削減できます。
特に、取引先ごとにレイアウトが異なる場合でも、汎用×非定型フォーマット型のAI-OCRを活用することで対応範囲を広げやすくなります。FAXや紙ベースの取引がどうしても残る業界においては、大きな業務効率化につながります。
現場帳票・検査記録・点検報告書などのフィールド業務
製造業や建設業、保守・点検業務などでは、現場で記入するチェックシートや検査記録、点検報告書が多く発生します。これらの帳票は、手書き項目が多く、入力の手間に加えて、読みづらさや記入漏れが課題になることもあります。
手書きに強いAI-OCRを活用することで、現場で記入した紙の帳票を後からまとめてスキャンし、設備番号や測定値、点検結果などの情報を自動で抽出できます。
その結果、保守履歴や検査履歴をデジタルで蓄積しやすくなり、トレーサビリティの確保や分析業務にもつなげやすくなります。
ロジスティクス・配送伝票・入出荷管理
物流現場では、配送伝票や入出荷伝票、送り状など、アナログな帳票が多く存在します。AI-OCRでこれらの伝票番号や送り先情報、品目情報などを読み取り、WMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)に連携することで、入出荷処理のスピードと正確性を高めることができます。
特に、運送会社ごとにフォーマットが異なる送り状やラベルに対しても、AI-OCRを活用することで、現場でのスキャンとデータ登録を一体化しやすくなります。これにより、手書き伝票とシステム側の情報のずれを減らし、問い合わせ対応の負荷軽減にもつながります。
このように、AI-OCRは「紙のデータ化」という範囲を超えて、名刺管理、経理・購買、申込受付、FAX注文、現場帳票、物流業務など、多様なシーンで活用できる技術です。
AI-OCR導入時に押さえておくべき3つの注意点
AI-OCRを導入すると、これまで手入力に追われていた業務が一気に軽くなり、現場の負担を減らすことができますが、期待だけで導入を進めてしまうと、「思ったほど効率化されない」というギャップが生まれます。ここでは、導入前に理解しておくべきポイントについて、特に重要な3点に絞って解説します。
注意点① 元となる帳票の品質が精度を左右する
AI-OCRは、従来のOCRと比べて、軽度のかすれや傾き、FAXによる劣化、手書き文字の揺らぎなどに強く、画像補正やパターン認識によって「読める範囲」を大きく広げています。
それでもなお、文字が潰れて判別できない帳票や、極端に暗い・白飛びしている画像、解像度が不足しているスキャンデータなど、情報そのものが欠けている場合は、精度が不安定になります。
実際に導入した企業がよく直面するのは、「AI-OCRの性能が足りない」というよりも、「入力される帳票側にばらつきや劣化がある」という課題です。
よく使う帳票のフォーマットを整える、印刷・スキャン環境を統一するといった帳票側の見直しを行うことで、AI-OCRの強みを引き出しやすくなり、結果として読み取り精度と業務効率の双方を高めることにつながります。
注意点② 自社の帳票パターンを把握しないとサービス選定を誤る
前述したように、AI-OCRには、汎用×定型、汎用×非定型、業務特化×非定型といったタイプがあります。それぞれ得意領域が異なるため、「精度が高そうだから」「価格が手頃だから」という理由だけで選んでしまうと、帳票の種類と噛み合わず、運用で苦労することがあります。
例えば、取引先ごとにレイアウトが違う請求書が大量に届く企業では、定型型では対応しきれません。逆に、フォーマットが固定されている帳票ばかりの企業では、定型型のほうが安定します。
AI-OCRを導入する前に、「自社の帳票は何種類あるのか」「どこが共通で、どこが揺れているのか」を棚卸ししておくと、失敗を防ぎやすくなります。
注意点③ セキュリティ要件を満たせるかの事前チェックが欠かせない
AI-OCRが扱う情報は、名刺、契約書、請求書など、どれも機密性が高いデータです。そのため、クラウド型を採用する場合は、データの保存場所や削除ポリシー、暗号化、学習データの扱いなど、セキュリティ面の確認が必須となります。
◆特に確認しておくべきセキュリティ面のポイント
・個人情報が外部に残らないか
・データは処理後に自動削除されるか
・自社のセキュリティ基準と整合しているか
このあたりの確認を後回しにすると、導入の最終段階で差し戻しになり、プロジェクトが停滞するケースが多くあります。最初の段階で、セキュリティ担当部門と要件をすり合わせておくのが、安全で確実な進め方です。
まとめ
AI-OCRは、企業のさまざまな入り口業務を効率化できる技術として広がりつつあります。特に、帳票パターンの多さ(定型か非定型か)と、業務が汎用か専門特化かによって適したAI-OCRのタイプが変わるため、導入時には、
・帳票の種類とボリューム
・どこまで自動化し、どこを人が確認するか
・セキュリティ要件
・テンプレート設計・運用の手間を含めた総コスト
といった点を整理しておくことが重要です。
また、OCRで読み取った先の 「システム登録」「メール通知」「ワークフロー」 をどう設計するかで、業務の効率化度合いは大きく変わります。
特に、弊社が提供する「SamuraiAI」は、OCRで読み取った情報をそのままSaaS登録やメール生成といった「読み取り後の工程」まで自動化できるワークフロー型AIエージェントです。
まずは自社の帳票と業務フローを整理し、実際にツールを試しながら、どこまで自動化できるかを見極めるところから始めるのが効果的です。
無料から導入できるSamuraiAIの詳細については、下記の公式ページをご覧ください。