FDEとは顧客の現場と開発をつなぎ実装まで担うエンジニア

FDE(Forward Deployed Engineer)とは、顧客の業務課題を理解し、AIやシステム、業務自動化の仕組みを現場で使える形に実装するエンジニアのことです。
一般的なエンジニアがプロダクトやシステムの開発を主に担うのに対し、FDEは顧客の業務理解、要件整理、技術実装、導入後の改善まで横断的に関わる点が特徴です。
FDEという職種は、2010年頃に広がっていた職種とされていますが、近年、AIの活用が急速に進むなかで改めて注目が高まっています。
一方で、FDEという名前を聞いたことはあっても、一般的なエンジニアやITコンサルタントと何が違うのか、どのような仕事内容なのか、どのようなスキルが求められるのかまではわかりにくいと感じる方も多いでしょう。
そこで本記事では、ワークフロー型AIエージェント「SamuraiAI」の開発を手がける株式会社Kivaに所属する筆者が、FDEの役割や仕事内容について詳しく解説いたします。
FDEについて知りたい企業担当者や、FDEをキャリアの選択肢として考えている方はぜひ本記事を参考にしてください。
なお、弊社「株式会社Kiva」でも、FDEを募集しています。興味のある方は、下記の募集ページをぜひご覧ください。
FDE(フォワード・デプロイド・エンジニア)の役割
FDEは、顧客の現場で業務課題を理解し、技術やプロダクトを使って解決策を実装する職種です。まずは、FDEの基本的な役割を図解にしたので、下図をご覧ください。
◆FDEの役割イメージ

FDEは、顧客の現場とプロダクト開発の間に立つ役割を担います。顧客の業務課題や現場の要望を理解し、それを技術要件として整理します。
そのうえで、技術基盤やプロダクトを活用しながら、現場で使える形に実装し、導入後の改善にも関わります。
◆FDEの基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
正式名称 | Forward Deployed Engineer |
定義 | 顧客の現場に入り、課題解決に必要な技術導入や開発を担うエンジニア |
主な役割 | 顧客課題の理解、要件整理、実装、導入支援、運用改善 |
特徴 | 技術力だけでなく、顧客折衝力や業務理解力も求められる |
活躍しやすい分野 | AI導入、SaaS導入、業務自動化、データ活用、システム導入 |
FDEは、単にシステムを開発するだけの職種ではありません。顧客の業務課題を理解し、技術でどのように解決できるかを考え、実際の導入や改善まで関わる点が特徴です。
特にAI導入では、モデルやツールを用意するだけでは十分ではありません。業務フロー、利用するデータ、既存システム、スタッフの運用方法などに合わせて、AIを実際に使える形へ落とし込む必要があります。FDEは、その橋渡しを担う職種といえます。
一般的なソフトウェアエンジニアがプロダクトやシステムの開発を主に担うのに対し、FDEは顧客の現場により近い位置で活動します。また、ITコンサルタントのように課題整理や提案だけを行うのではなく、技術的な実装にも関わります。
そのため、AI領域におけるFDEには、エンジニアリングの知識だけでなく、業務理解力、課題整理力、AIを現場に適用する力が求められます。
FDEと一般的なエンジニア・ITコンサルタントの違い
ここでは、FDEと混同されやすい職種との違いについて解説いたします。FDEはエンジニアの一種ですが、一般的なソフトウェアエンジニアよりも顧客の現場に近く、ITコンサルタントよりも実装に深く関わる点が特徴です。
以下に類似する職種との違いを比較表としてまとめましたのでご覧ください。
◆FDEと関連職種の違い
職種 | 主な役割 | 顧客への関与度 | 実装への関与 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
FDE | 顧客課題の理解から、AIやシステムの実装・導入支援まで担う | 高い | 高い | 現場理解と技術実装の両方を担う |
ソフトウェアエンジニア | プロダクトやシステムを設計・開発する | 低〜中程度 | 高い | 開発業務が中心 |
ITコンサルタント | 業務課題の整理やシステム導入方針を提案する | 高い | 中程度 | 課題整理や方針策定が中心 |
プリセールス | 商談時に技術面から提案を支援する | 中程度い | 低〜中程度 | 導入前の技術説明や提案支援が中心 |
カスタマーサクセス | 導入後の活用促進や継続利用を支援する | 高い | 低〜中程度 | 活用支援や定着支援が中心 |
FDEと一般的なソフトウェアエンジニアの違いは、顧客の業務課題にどこまで踏み込むかにあります。ソフトウェアエンジニアは、プロダクトやシステムの設計・開発を主に担いますが、FDEは顧客の業務内容や課題を理解したうえで、AIやシステムをどのように実装すれば業務改善につながるのかまで考えます。
ITコンサルタントとの違いは、実装への関与度です。ITコンサルタントは、業務課題の整理や導入方針の策定を担うケースが多い職種です。
FDEも課題整理や要件整理に関わりますが、それだけではなく、プロトタイプ開発、AI機能の実装、既存システムとの連携、導入後の改善まで関わる点が異なります。
特にAIの領域では、ツールを導入しただけで業務に定着するとは限らず、どの業務にAIを使うのか、どのデータを利用するのか、どのような画面やワークフローで現場に組み込むのかを設計する必要があります。FDEは、このようなAI導入における現場理解と技術実装の間を埋める役割を担います。
つまりFDEは、顧客の課題を理解し、AIやシステムを使って解決策を形にし、現場で使える状態まで導入・改善する職種です。特にAI導入による業務自動化などにおいては、技術と現場の両方を理解できるFDEの役割が重要であるといえます。
FDEの主な6つの仕事内容
ここでは、FDEの役割である「顧客の業務の理解」から「ソリューションの導入・改善」までの流れを通して、具体的な仕事内容を大きく6つに分けて解説していきます。
仕事内容① 顧客の業務課題を理解する
FDEの最初の仕事は、顧客の業務課題を理解することです。単に担当者へヒアリングするだけではなく、顧客側のプロジェクトチームに深く関わり、実際の業務フローやシステムの使われ方を確認しながら、現場で何が起きているのかを把握します。
AI導入では、顧客自身も課題を明確にできていない場合があります。例えば、「問い合わせ対応を効率化したい」という要望があっても、実際には回答作成に時間がかかっているのか、過去の対応履歴を探す作業に時間がかかっているのか、担当者ごとに判断がばらついているのかによって、必要な対策は変わってきます。
そのためFDEは、現場の担当者がどの画面を見て、どの情報を確認し、どのような判断をしているのかまで確認し、必要に応じて、既存システム、社内データ、承認フロー、例外対応の流れなどを整理し、解決すべき課題を見極めます。
仕事内容② AIやシステムで解決する要件を整理する
顧客課題を把握した後は、AIやシステムでどこまで解決するのかを整理します。これは、一般的な要件定義に近い業務ですが、FDEの場合はより実装に近い視点が必要になります。
生成AIを業務に導入するケースを例に挙げると、以下のようなポイントを確認する必要があります。
◆AI導入で確認すべき主なポイント
どの業務にAIを使うのか
どのデータをAIに参照させるのか
既存システムとどのように連携するのか
社内の権限管理やセキュリティ要件をどう扱うのか
現場のスタッフがどの画面やフローで利用するのか
FDEは、これらを整理して、技術的に実現できる形へ落とし込みます。
仕事内容③ プロトタイプや業務アプリケーションを開発する
整理した要件をもとに、実際に動くプロトタイプや業務アプリケーションを開発します。AI領域では、初期段階から完璧なシステムを作るよりも、まず動く形を作り、顧客の業務に合うかを検証することが多くなります。
そのためFDEには、顧客と会話しながら素早く実装し、必要に応じて修正する力が求められます。
仕事内容④ 既存システムやデータとの連携を設計する
AIや新しいアプリケーションを業務に導入する際は、既存システムや社内データとの連携が重要になります。
これら単体では便利に見えても、実際の業務データや社内システムとつながらなければ、現場で使いにくい状態になりやすいためです。FDEは、API連携、データ連携、権限管理などを考慮しながら、業務フローに組み込みます。
仕事内容⑤ 導入後の運用改善
FDEの仕事は、システムを導入して終わりではありません。導入後に現場で使われているか、想定どおりに業務改善につながっているかを確認し、必要に応じて改善します。
導入後、実際に使い始めてから課題が見えることも少なくありません。回答精度、操作性、業務フローとの相性、社内ルールとの整合性など、運用後に調整すべき点が出てきます。
FDEは、このような課題を拾い上げ、改善を続ける役割も担います。
仕事内容⑥ 現場の知見をプロダクト開発へ戻す
FDEには、顧客の現場で得た知見をプロダクト開発側へ戻す役割もあります。特に、顧客の現場で発生する課題は、プロダクトの改善点や新しい機能要件につながります。
FDEは、顧客の個別課題を解決するだけでなく、そこで得た知見をもとに、プロダクト全体の改善にも貢献します。
FDEの仕事内容をまとめると、顧客課題の理解、要件整理、技術設計、実装、導入支援、運用改善までを横断する職種といえます。
特にAI領域では、モデルやツールを導入するだけでは成果につながらないため、FDEのように現場と技術の間に入り、実際に使える形まで落とし込む役割が非常に重要になります。
企業がFDEを活用する4つのメリット
ここでは、企業がFDEを活用するメリットについて解説します。
メリット① 現場に合ったソリューションを設計しやすい
FDEを活用するメリットのひとつは、現場の業務に合ったソリューションを設計しやすくなることです。
AIツールやシステムを導入しても、現場の業務フローに合っていなければ、実際には使われないまま終わる可能性があります。
例えば、問い合わせ対応、データ入力、資料作成、社内検索、承認作業などの業務でも、担当者がどの画面を使い、どの情報を確認し、どのタイミングで判断しているのかによって、必要な仕組みは変わります。
FDEは、顧客の業務内容や現場の課題を理解したうえで、AI、システム、データ連携、業務自動化などをどのように組み合わせるべきかを整理するため、単にツールを導入するだけでなく、実際の業務で使われる形に近づけやすくなります。
メリット② PoCで終わらず本番運用につなげやすい
新しいシステムやAIの導入では、PoC(※)までは進んでも、本番運用に移行できないケースがあります。PoCでは一部の業務や限定されたデータで効果を確認できても、実際の運用では、既存システムとの連携、権限管理、データ品質、現場の利用方法などを整理する必要があるためです。
FDEは、プロトタイプの開発や検証だけでなく、導入後の運用を見据えた実装にも関わります。試験的に動かすだけではなく、現場の業務フローに組み込み、継続して使える状態にすることを支援します。
そのため、FDEを活用することで、導入プロジェクトが検証段階で止まりにくくなり、本番運用への移行を進めやすくなります。
※PoC(Proof of Concept):新しい技術やシステムを本格導入する前に、実現可能性や効果を小さく検証する取り組み。日本語では「概念実証」と訳される。
メリット③ 既存システムや業務データとの連携を進めやすい
AIやシステムを業務で活用するには、既存システムや業務データとの連携が重要です。単独のツールとしては便利に見えても、社内データや業務システムとつながっていなければ、現場で使いにくい状態になりやすいためです。
例えば、顧客情報や受発注データ、社内文書などを活用する場合、データの所在、形式、権限、更新頻度などを整理する必要があります。また、既存のSaaSや基幹システムと連携する場合は、APIや認証、セキュリティの設計も必要になります。
FDEは、このような条件を踏まえて、顧客の業務に合った仕組みを設計します。これにより、実際の業務プロセスの一部として活用しやすくなるため、AIやシステムを単体で導入するよりも圧倒的に連携がスムーズです。
メリット④ 導入後の改善と社内ノウハウの蓄積につながりやすい
FDEは、現場での利用状況や課題を把握し、必要に応じてシステム設定、データ連携、画面設計、運用フローなどを見直すため、導入後に発生した課題を放置せず、現場に合う形へ調整しやすくなります。
また、FDEがプロジェクトに関わることで、企業側の担当者もAI活用や業務自動化、システム導入の進め方を学びやすくなります。
課題整理から実装、検証・改善のプロセスを通じて、社内にソリューション導入のノウハウを残しやすい点も大きなメリットです。
FDEに求められるスキルとは?
ここでは、FDEに求められる主なスキルについて解説いたします。FDEは、開発スキルだけでなく、AIへの理解、顧客折衝、業務設計、プロジェクト推進など、複数のスキルが求められます。
◆FDEに求められる主なスキル
スキル | 具体的な内容 |
|---|---|
開発スキル | フロントエンド、バックエンド、API、データ処理などを扱う力 |
AI・LLMの理解 | 生成AIやLLMを業務に組み込むための基本理解 |
業務理解力 | 顧客の業務フロー、既存システム、運用上の制約を理解する力 |
課題整理力 | 顧客の要望を整理し、解決すべき課題を構造化する力 |
要件定義・業務設計力 | AIやシステムで実現する範囲、必要な機能、運用フローを設計する力 |
顧客折衝力 | 顧客と直接やり取りし、技術的な内容をわかりやすく説明する力 |
プロジェクト推進力 | 複数の関係者を巻き込み、導入や改善を前に進める力 |
業務自動化の知識 | RPAや業務自動化ツールを理解し、AI活用と組み合わせる力 |
FDEには、まずAIやシステムを実装するための開発スキルが求められます。ただし、FDEの役割は開発だけではありません。顧客の業務フローや既存システムを理解し、どの業務にAIを組み込むべきか、どこまで自動化できるか、どの部分は人の判断を残すべきかを整理する力が必要です。
また、FDEは顧客や社内の開発チーム、ビジネス側の関係者と連携しながら導入を進めるため、顧客折衝力やプロジェクト推進力も重要です。
特にAI導入では、技術的には実現できても、現場の運用に合わなければ定着しません。そのためFDEには、開発、AI理解、業務設計、顧客対応を横断しながら、AIを現場で使える状態まで落とし込む力が求められます。
FDEの年収は500万円台から1,000万円以上の例もある
FDEは比較的新しい職種であり、一般的な平均年収を示す公的なデータはまだ多くありませんが、国内では年収500万円台から1,000万円以上と、エンジニア職の中でも比較的高収入を狙いやすい職種といえます。
背景には、FDEに求められるスキルの幅広さがあります。FDEは、単に開発ができるだけではなく、顧客の業務課題を理解し、AIやシステム、業務自動化などを組み合わせて、現場で使える仕組みにする必要があります。
さらに、顧客折衝、要件整理、プロジェクト推進、導入後の改善まで関わるため、技術力とビジネス理解の両方が求められます。
そのため、FDEは開発経験を持ちながら、顧客課題の解決やAI・システム導入にも関わりたい人にとって、キャリアの選択肢になりやすい職種です。今後さらに注目される職種であるため、平均収入額の上昇も十分に考えられます。
AI時代にFDEの重要性が高まる理由
企業における生成AIの活用は広がっています。矢野経済研究所の調査によると、2025年時点で生成AIを活用している企業は43.4%とされています。
一方で、生成AIを活用している企業215社に対してAIエージェントの利用状況を尋ねたところ、「利用中」は3.3%にとどまっています。
引用:国内生成AI/AIエージェントの利用実態に関する法人アンケート調査を実施(2026年 / 株式会社矢野経済研究所)
AIエージェントは今後の企業活動において重要な役割を持つ可能性があります。従来の生成AIが文章作成や情報整理などの補助的な活用にとどまりやすかったのに対し、AIエージェントは目的に応じて情報を取得し、業務手順に沿って処理を進める仕組みとして活用できます。
実際に同調査でも、AIエージェントについて「導入検討中」が13.5%、「関心あり」が49.3%となっており、利用はまだ少ないものの、関心は広がっている状況です。
つまり、AIエージェントはこれからの企業活用で注目される一方で、現時点では実際の導入まで進んでいる企業は一部にとどまっています。
背景には、AIエージェントが比較的新しい仕組みであることに加え、自社のどの業務に使うべきか、どのデータやシステムと連携すべきか、どこまで自動化してよいのかを判断しにくいという課題があります。
AIエージェントは、導入すればすぐに業務を自動化できるものではありません。業務フロー、利用するデータ、既存システム、権限管理、人による確認ポイントなどを整理し、現場で使えるワークフローとして設計する必要があります。
そこで重要になるのがFDEの役割です。FDEには、AIエージェントの導入においても、単なるツール選定ではなく、業務設計、技術実装、導入後の改善までを横断して支援できることが求められます。
AI時代の企業にとって重要なのは、AIを導入することではなく、AIを業務の中で機能する仕組みにすることです。FDEは、その橋渡しを担う職種として、今後さらに重要性が高まると考えられます。
まとめ
FDEは、顧客の業務課題を理解し、AIやシステム、業務自動化の仕組みを現場で使える形で実装するエンジニアであり、顧客の業務理解、課題整理、要件定義、実装、導入後の改善まで横断的に関わります。
特にAI活用やAIエージェントの導入では、ツールを導入するだけでは成果につながりません。業務フロー、既存システム、利用データ、権限管理、人による確認ポイントなどを整理し、現場で使える仕組みにする必要があります。
そういった意味で、FDEはAI時代の企業において重要性が高まりやすい職種といえます。
弊社「株式会社Kiva」でも、FDEを募集しています。顧客業務の深い理解、SamuraiAIを活用したカスタム自動化ワークフローの設計・構築、AIエージェントの調整・最適化、導入後の継続改善などに関わるポジションです。
FDEとしてAIエージェントの実装や顧客課題の解決に携わりたい方は、下記の募集ページをぜひご覧ください。
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SamuraiAIは、ブラウザ操作に特化したタスク自動化アプリケーションとして、データ入力、メール返信、問い合わせフォーム送信など、さまざまなWeb業務の自動化を支援します。