獲得競争が始まっている「AI人材」を確保する3つの方法

獲得競争が始まっている「AI人材」を確保する3つの方法

近年、AI人材の求人は急増しています。企業の採用意欲も高い一方で、採用市場は逼迫しており、多くの企業がIT人材の採用目標について達成の見通しを持てていません。AI人材の獲得競争は、すでに進行している段階といえます。

AI人材を確保する方法は、主に以下の3つです。

◆AI人材を確保するための3つの方法

① AIの専門性を持つ人材を採用する

② 業務を知っている社員を育成する

③ 社外の事業者に委託する

どの方法を選ぶかによって、かかる時間もコストも変わります。ただし共通しているのは、自社の業務にどうAIを組み込むかを判断する役割が社内に残るという点です。

AI人材に求められる中心的な能力は、AIを作る技術ではなく、どの業務にどう使うかを決める判断力にあり、この部分は、外部から調達することができないことを理解しておくことが重要です。

この記事では、AXプラットフォーム「SamuraiAX」の開発を手がける株式会社Kivaに所属する筆者が、AI人材の定義から確保の方法、必要なスキルや進め方までを詳しく解説します。

AI人材の採用は求人が急増し、獲得競争が続いている

まずは、AI人材の採用市場の現状を見てみます。

◆生成AI関連の正社員求人数の推移

生成AI関連の正社員求人数の推移

出典:レバテック株式会社「50代IT人材の転職希望者が3年で約2.9倍に、「フルリモート」求人はピーク比約30%減少、出社回帰の傾向か」(2026年2月)

生成AI関連の求人は短期間で急増しました。レバテック株式会社の調査によると、ChatGPTが一般公開された2022年11月と比べ、2025年6月時点の生成AI関連の正社員求人数は約29.7倍になっています。

求められているのは、プロンプト設計や大規模言語モデル(LLM)の活用、評価、社内データとの統合といったスキルであり、AIを研究する人材というより、AIを実務に組み込んで使う人材が求められていることがわかります。

企業側の採用意欲も高い水準にあります。

◆AI人材の採用見通し

AI人材の採用見通し

出典:時事通信「AI人材、半数が積極採用 新事業や業務効率化狙う―主要100社調査」(2026年3月)

時事通信が主要100社に実施した調査では、AI関連のスキルを持つ人材の採用を「強化する」が26社、「維持する」が24社となり、半数の企業が積極的な姿勢を示しました。狙いは、AIを活用した新事業の展開と業務効率化です。

ただし、採用意欲が高いものの、必ずしも採用が成功しているわけはなく、レバテックが企業の採用担当者1,000名に実施した調査では、約3割が2025年度のIT人材採用について目標達成の見通しを持てていないと答えています。

AIを導入済みの企業に限ると68.6%が増員予定としており、AIを入れた企業ほど人手を必要としている状況です。

出典:レバテック株式会社「AI普及でIT人材の採用競争が激化、約3割の企業が採用数目標達成の見通し立たず」(2026年1月)

AI人材を確保するための3つの方法

それでは、AI人材をどう確保するかについて、3つの方法を紹介します。

◆AI人材を確保する3つの方法

方法

効果が出るまで

主なコスト

向いているケース

① AIの専門性を持つ人材を採用する

短期

採用費用と人件費

自社でAIを開発する必要がある

② 業務を知っている社員を育成する

中長期

教育費用と現場の時間

業務理解のある人材を活かしたい

③ 社外の事業者に委託する

短期

委託費用

専門性の高い技術を一時的に必要とする

以下に、それぞれの方法について詳しく解説します。

方法① AIの専門性を持つ人材を採用する

外部から即戦力を採用する最大の利点は、育成に数年かかるスキルを、入社直後から使える状態で確保できることです。自社でAIモデルを開発する、あるいはAIを組み込んだ製品を提供するといった場合、この方法以外の選択肢は限られます。

採用で成果を出しやすいのは、必要な人材像を具体的に絞れている場合です。どの業務のどの工程に、どんな技術を持つ人が必要なのかを定義できていれば、要件が現実的な範囲に収まります。

逆に「AIに強い人がほしい」という状態のまま募集をかけると、要件が過剰になり、採用の難易度だけが上がります。求める人材像を決めるには、自社のどの業務でAIを使うのかが先に決まっている必要があります。

また、採用市場はひっ迫しており、前項でも解説した通り、企業の約3割が採用目標の達成見通しを持てていません。この点が、現状においての採用のデメリットといえるでしょう。

方法② 業務を知っている社員を育成する

社内育成の強みは、すでに業務を理解している人材を対象にできる点です。どの業務にAIを適用すれば効果が出るかという判断は、自社の業務を知らなければできません。この部分を持っている人材に技術を足すほうが、技術を持つ人材に業務を覚えてもらうより早いことがあります。

育成が向いているのは、AIを自社で開発するのではなく、既存のAIを業務に組み込んで使う場合です。この範囲であれば、業務システムの知識がある人材が身につけられます。

ただし、育成には一定の時間がかかります。研修を受けさせれば済むものではなく、実際にAIを使って業務を改善する経験を積む必要があるためです。現場の業務時間を割く必要も出てくるでしょう。

方法③ 社外の事業者に委託する

3つ目は、社外の専門家や事業者に任せる方法です。AIシステムの開発、データ基盤の構築、AIの評価や精度改善といった技術的な作業は、外部の専門性を使うほうが早く確実に進むことがあります。

自社で採用するには要件が高すぎる領域や、一時的にしか必要のない作業であれば、この方法が合理的です。

一方で、外に出せない部分もあります。どの業務にAIを適用すれば効果が出るのか、どこまでをAIに任せてどこから人が判断するのかという線引きは、自社の業務を知らなければ決められません。

外部の担当者は、その業務が今どんな手順で回っているのか、どんな例外処理があるのかを知りません。そのため、要件が曖昧なまま依頼すると、汎用的な提案が返ってくるだけです。

外部委託は、自社側に判断できる人材がいることを前提とした方法です。委託先を評価し、要件を決め、成果を検証する役割は社内で持たなければならない点には注意が必要です。

以上が、AI人材を確保する代表的な方法ですが、どれか一つを選ぶというわけではありません。開発が必要な部分は外部委託で、業務への適用は育成で、といった組み合わせが実際的です。

AI人材における5つの人材像

ここでは、AI人材が具体的にどのような人材を指すのかを、解説します。内閣府の資料では、AI人材について以下のように整理されています。

◆AI人材の5つの人材像

人材像

役割

① AI適正活用人材

AIに関する最低限のリテラシーを身につけ、適正な形でAIを利活用する。すべての国民が目指すべきものとされる

② AI研究開発人材

AIの研究開発に携わる研究者やエンジニア。深い理解と洞察を持つ高度専門人材として、基礎研究や開発を担う

③ AI実装人材

汎用的なAIソリューションではなく、現場に適合したAIソリューションを提供する。産業や行政の現場とAIの双方の理解が求められる

④ AIガバナンス人材

安全で信頼できるAIを開発、活用するためのルールや仕組みを整備、運用する

⑤ AIイノベーション人材

AIを利活用して経済や社会構造の変革と付加価値の創出を行い、課題解決を先導する

出典:内閣府「人工知能基本計画」(2026年7月14日)

上記5つは、2026年7月14日に閣議決定された「人工知能基本計画」にて示された材像です。

「① AI適正活用人材」は、すべての国民が目指すべきものとしています。これは裏を返せば、AI人材の確保は一部の専門職を採用すれば済む話ではなく、組織全体の底上げを前提とした取り組みだということです。

「② AI研究開発人材」は、AI人材という言葉から一般に想像されやすい層です。基礎研究やモデル開発を担うため、求められる専門性は高くなります。ただし、自社でAIモデルを開発するかどうかによって、必要性は大きく変わります。

「③ AI実装人材」は、特に重要な位置づけになっています。内閣府の同計画は、AIトランスフォーメーション(AX)を進める上で中核となる人材としてAI実装人材を挙げています。

ここで求められるのは、汎用的なAIソリューションを持ち込むことではなく、現場に適合した形にすることです。そのためには、産業や行政の現場とAIの双方を理解している必要があります。AIの知識があるだけでも、現場を知っているだけでも足りない、という点がこの人材像の難しさです。

「④ AIガバナンス人材」が担うのは、AIを安全に使うためのルールと仕組みです。計画では、AI研究開発人材、AI実装人材と並んで、育成と確保を推進する対象として明記されています。

「⑤ AIイノベーション人材」は、AIを使って経済や社会の構造そのものを変え、新しい価値を生み出す役割です。5つのなかでは最も経営に近い層と言えます。

AI人材とIT人材・DX人材との違いは、目的の置き方にある

IT人材は情報システムの構築と運用、DX人材はデジタルによる事業と組織の変革、AI人材はAIによる価値の創出を目的とします。

経済産業省の「IT人材需給に関する調査」では、IT人材を、IT企業やユーザー企業の情報システム部門などに属する技術者として試算しています。

一方でAI人材には、事業部門や研究開発部門に属する人材も含まれるため、IT人材には完全には包含されないとされています。AI人材は、情報システム部門の外側にも広がる人材像です。

出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」

AI人材に必要なスキルは「技術」「業務」「ガバナンス」の3領域に分かれる

ここでは、AI人材に求められるスキルを、技術、業務、ガバナンスという3つの領域に分けて紹介します。

◆AI人材に求められるスキルの3領域

領域

内容

特に求められる人材像

① 技術

AIモデルやシステムの開発、AIの実装と運用、前提となるデータの整備

AI研究開発人材、AI実装人材

② 業務

現場の課題設定、業務プロセスへの適用、関係部門の巻き込み

AI実装人材、AIイノベーション人材

③ ガバナンス

利活用ルールの整備、リスクの把握、責任の所在の明確化

AIガバナンス人材、および全社

それぞれの領域において、AI人材に求められるスキルについて、以下に詳しく解説します。

①技術領域で求められるスキルは、プロンプト設計と社内データの連携

AI人材の技術スキルというと、機械学習やPythonでの開発などを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実際の求人で求められているのは、別の技術です。

レバテック株式会社の調査によると、生成AI関連の求人で目立つのは、プロンプト設計、大規模言語モデル(LLM)の活用、評価と改善、社内データとの統合といったスキルです。

出典:レバテック株式会社「50代IT人材の転職希望者が3年で約2.9倍に、「フルリモート」求人はピーク比約30%減少、出社回帰の傾向か」(2026年2月)

具体的には、以下のような作業を担える人材です。

◆技術領域で求められるAI人材スキル

・AIに的確な指示を出し、期待する精度の出力を安定して得る

・社内のマニュアルや過去データをAIが参照できる形にして、自社の業務に即した回答を返せるようにする

・AIの出力が正しいかを検証し、指示や設定を調整して精度を上げる

・複数のAIサービスやツールを業務システムとつなぐ

いずれも、AIそのものを作る技術ではなく、すでにあるAIを、自社の業務で使える状態に持っていく技術です。

この違いは採用にも育成にも影響します。モデル開発ができる人材は市場に少なく、採用の難易度も報酬水準も高くなります。

一方、既存のAIを業務に組み込む技術は、業務システムの知識がある社内人材が身につけられる範囲にあります。

自社に必要なのがどちらなのかを見極めないまま採用に動くと、要件が過剰になり、なかなか人材が見つからないということになります。

②業務領域で求められるスキルは、AIに任せる業務を切り分ける判断

技術がわかる人材を採用しても、成果につながらないことがあります。多くの場合、足りていないのは技術ではなく、どの業務にAIを使うかを決める判断です。

人工知能基本計画は、AI実装人材を、汎用的なAIソリューションではなく現場に適合したAIソリューションを提供する人材と定義し、産業や行政の現場とAIの双方を理解することが求められるとしています。

出典:内閣府「人工知能基本計画」(2026年7月14日)

ここで実際に求められるのは、以下のような判断です。

◆業務領域で求められるAI人材スキル

・日々の業務のなかから、AIに任せて効果が出る作業を見つける

・その業務が今どんな手順で回っているかを把握し、AIを組み込む前提で組み替える

・どこまでをAIに任せ、どこから人が判断するかの線を引く

・導入後に現場が使い続けられる形にし、関係部門を巻き込む

例えば、問い合わせ対応にAIを使う場合、過去の対応履歴のどこまでを参照させるか、AIの回答をそのまま返してよい問い合わせと担当者が確認すべき問い合わせをどう分けるか、といった判断が必要になります。これらは業務を知らなければ決められません。

技術スキルとの最大の違いは、外部から調達しにくい点にあります。ツールの使い方は外部の研修や支援会社から学べますが、自社の業務手順や例外処理の実態を知っているのは社内の人材だけです。

つまり、この部分を社外に委ねると、「AIに詳しい人材を採用しても現場が変わらない」という状況が起こりやすくなるため注意が必要です。

③ガバナンス領域で求められるスキルは、AIの判断を人がどこで確認するかの設計

AIが業務の一部を自動で処理するようになると、その結果に誰が責任を持つのかという問題が出てきます。ここを決めるのがガバナンス領域です。

人工知能基本計画は、エージェント型AIの登場によって責任の所在が曖昧になることを課題として挙げています。同計画では、人の関わり方について以下の3つの考え方が議論されているとしています。

◆現在議論されている「AIと人の関わり方」

考え方

人の関わり方

Human in the loop

人がAIのタスク実行の流れに直接関与する

Human on the loop

タスク実行自体はAIに任せ、その流れの全体設計や監視は人が担う

Human in the lead

AIをツールとして統制し、人が意思決定や価値創出の主導権を握る

出典:内閣府「人工知能基本計画」(2026年7月14日)

実務では、業務ごとにどの形を採るかを決めることになります。社内向けの資料作成なら人の確認を最小限にできますが、顧客に直接届く回答や契約に関わる判断であれば、人が確認する工程を残す必要があります。

この線引きを業務単位で決め、運用のルールとして明文化するのがガバナンス領域の中身です。

同計画は、このような対応をAIの制度面や技術面だけの問題とせず、組織全体でリテラシーを向上させ、責任の所在を明確にする組織管理による対応として位置づけています。つまり、専門の担当者を置けば済むのではなく、AIを使うすべての部門が関わる領域だということを意味しています。

AI人材を育成するための3つのポイント

ここでは、AI人材の育成を進める際に押さえておくべき3つのポイントを解説します。

ポイント①育成する対象は、全社員ではなく人材像ごとに分ける

育成でよくある失敗は、全社員に同じ生成AI研修を実施して終わることです。ツールの使い方を学んだ社員は増えますが、業務の進め方は変わりません。

すでに解説した通り、AI人材にはいくつかの人材像があります。すべての社員が目指すべきとされるAI適正活用人材と、現場に適合したAIの使い方を設計するAI実装人材とでは、必要な知識も育成にかかる期間も異なります。同じ研修で両方を育てることはできません。

対象を決めるには、自社のどの業務でAIを使うのかが先に決まっている必要があります。使う場面が決まっていなければ、誰にどんなスキルが必要かも決まりません。

ポイント② 育成のゴールは、公的なスキル基準を使うと決めやすい

対象を決めたら、その人材にどこまでのスキルを求めるかを決めますが、ここで自社だけで基準を作ろうとすると、議論が発散しやすくなります。

参考になるのが、経済産業省とIPAが策定する「デジタルスキル標準」です。2026年4月のver.2.0への改訂では、AIの実装や運用に関するスキル、AIガバナンスに関するスキルが新設されました。

出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「デジタルスキル標準ver.2.0を公開」

また、すべてのビジネスパーソンが身につけるべき内容を示したDXリテラシー標準も含まれており、全社員向けの底上げと専門人材の育成を、それぞれ別の基準で設計できます。

ただし、これはDX推進の枠組みであり、AI人材の育成のために作られたものではありません。そのまま当てはめるのではなく、自社に必要な項目を選ぶ形で使うことが重要です。

ポイント③ 研修で終わらせず、自社の業務課題を解くところまで設計する

3つ目のポイントは、学んだスキルをどこで使うかを決めることです。AI人材に求められるスキルの中心は、どの業務にAIを適用するかという判断です。

この判断力は講義では身につきません。AIの得意なことと苦手なことは、実際に自社のデータで試してみるまでわからないためです。

具体的には、育成プログラムに以下の要素を組み込みます。

◆AI人材の育成プログラムに組み込むべき要素

1. 受講者が自部門の業務課題を持ち込む

2. その課題に対してAIを使った解決策を作る

3. 実際に業務で試し、うまくいかない部分を修正する

4. 結果を他部門に共有する

特に重要なのは3つ目です。最初に作った仕組みが期待どおりに動くことはほとんどありません。指示の出し方を変える、参照するデータを絞る、人が確認する工程を足すといった調整を繰り返すなかで、どこまでをAIに任せられるかの感覚が身につきます。

この設計には、現場の業務時間を割く必要があります。育成を人事部門だけの取り組みにすると、ここが確保できずに止まります。そのため、対象者の上長を巻き込み、業務課題の選定から関わってもらうことが前提になります。

まとめ

AI人材を確保する主な方法は「採用」「育成」「外部委託」の3つです。外部委託は委託費用がかかるうえ、どの業務にAIを使うかを判断する役割は社内に残るため、長期的には専門性を持つ人材を採用するか、自社内で社員を育成する方法が望ましいでしょう。

しかし、採用市場は逼迫しており、育成には数ヶ月〜年単位の期間が必要になります。

そこで並行して進めたいのが、AIを使う業務の手順そのものを設計しておくことです。どのデータを参照し、どの順番で処理し、どこで人が確認するかをあらかじめ決めて仕組みにしてしまえば、日々の運用に高い専門性を求めずに済みます。AI人材が育つのを待たずに、今いる社員で回せる範囲が広がります。

株式会社Kivaが提供するAXプラットフォーム「SamuraiAX(サムライ エーエックス)」は、この考え方に基づいたサービスです。Microsoft 365をベースに、Claude、Gemini、GPTと連携したワークフローを構築し、部署をまたぐ業務を自動化します。

ワークフローの構築はノーコードと自然言語で行えるため、エンジニアでない社員でも扱えます。各接続点には人の承認を挟む設計とし、操作ログを記録することで、統制された形での運用を実現します。

導入にあたっては、元大手企業の経営層やCDO、CIO出身のAX顧問と専任エンジニアが、業務の棚卸しから設計、社内定着までを伴走します。

AI人材の確保に課題を感じている企業のご担当者は、まずは下記のSamuraiAX公式サイトから、お問い合わせ・資料請求をご利用ください。

SamuraiAX 公式サイト