失敗しない「AXパートナー選定」10の質問チェックリスト

失敗しない「AXパートナー選定」10の質問チェックリスト

AX(AIトランスフォーメーション)を進めるうえで、AXパートナー(ベンダー)の選定は、取り組みの成否を決める重要な判断です。

AXの支援を掲げるサービスは増えていますが、その中身は企業によって大きく異なります。システムを提供する企業や専門人材が推進を担う企業など、支援の形はさまざまです。

そのため、費用や知名度だけで選んでしまうと、期待していた支援と実際の支援がずれ、取り組みが思うように進まなくなってしまうことも少なくありません。

AXパートナーの選定において最も重要なのは、「契約が終わったあと」です。

AXは、AIを導入して終わりではなく、業務の変化に合わせて見直し続ける取り組みです。そのため、契約期間中にどれだけ進んだかよりも、「契約が終わったときに社内に何が残るか」のほうが、最終的な成果に大きく影響します。

このような点を商談の段階で見極められるよう、本記事では、AXパートナーに確認すべき10の質問をチェックリストとして用意しました。

すべての候補に同じ質問を投げかけることで、各社の回答をそのまま並べて比べられるほか、提案書だけでは見えにくい支援の範囲や契約の条件の違いにも気づきやすくなります。

この記事では、AXプラットフォーム「SamuraiAX」の開発を手がける株式会社Kivaに所属する筆者が、AXパートナーの選定に使えるチェックリストをはじめ、代表的なAXパートナー9社の比較や、候補を比べる際のポイントまで詳しく解説します。

AXパートナーの選定時に確認すべき10の質問チェックリスト

まずは、AXパートナーとの商談や提案の比較の場で、相手に確認したい10の質問をチェックリストとして紹介します。

◆AXパートナー選定のチェックリスト

相手に聞く質問

回答で見るポイント

観点

□ 戦略、構築、定着、運用改善のうち、どこまでを担当してもらえますか

自社が任せたい工程と一致しているか

支援の範囲

□ 担当外の工程は、別のサービスや提携先で補えますか

1社でまかなえるか、別のパートナーが必要か

支援の範囲

□ 契約形態は請負ですか、準委任ですか。報酬は何に対して支払いますか(※)

思ったものができなかったときの扱い

契約

□ 構築したワークフローや資料の権利は、どちらに帰属しますか

契約後も自社で使い続け、手を加えられるか

契約

□ 1年間続けた場合の総額はいくらになりますか

他社と同じ期間でそろえて比べられるか

費用と期間

□ 途中で範囲を縮めたり、解約したりする場合の条件は何ですか

最低契約期間や更新の単位

費用と期間

□ 社内のデータはどこで処理・保管され、AIの学習に使われることはありますか

自社の情報管理のルールに合うか

データの扱い

□ 自社と同じ業界や似た業務を支援したことはありますか。提案の前に業務を聞き取る工程はありますか

提案が自社の業務に即した内容になっているか

業界・業務への理解

□ 実際に担当するのは誰で、担当が替わる場合はどう引き継ぎますか

営業時の説明と実際の担当者が一致しているか

担当体制

□ 契約が終わるとき、社内には何が残りますか

自社が残したいもの(動く仕組み、成果物、社員のスキルなど)と一致しているか

契約の終了

※ 「請負」は仕事の完成を約束する契約、「準委任」は業務を適切に進めることを約束する契約です。違いについては後述します。

このチェックリストの使い方のポイントは、候補のすべてに同じ質問をすることです。質問をそろえておくと、各社の回答をそのまま横に並べて比べられます。

提案書は各社の得意な部分を中心に書かれるため、提案書だけを比べると、書かれていない部分の差に気づきにくくなります。

もう1つは、回答があいまいだった項目を記録しておくことです。「ご相談のうえで」「状況に応じて」といった回答は、契約の前に具体的にしておかないと、あとから認識のズレにつながります。特に、権利の帰属や解約の条件は、口頭の説明ではなく契約書の条文で確かめておくことが重要です。

それぞれの質問がなぜ重要なのかについては、次項以降で詳しく解説します。

AXパートナーは「何を提供するか」で4つの類型に分けられる

チェックリストの最後に挙げた「契約が終わるとき、社内には何が残りますか?」という質問は、AXパートナーの種類によって答えが大きく変わります。

そこで、AXパートナーが提供するものの違いから、筆者が独自に4つの類型に分けて整理しましたので、それぞれの類型が何を提供し、契約後に社内に何が残るのかを解説します。

◆AXパートナーの4類型の比較

類型

主に提供するもの

契約後に社内に残るもの

向いている企業の状況

① システム+伴走型

自社開発のシステムと、導入から定着までの支援

業務の中で動き続けるAIの仕組み

社内に開発体制がなく、戦略から実装までまとめて任せたい

② 戦略・実装型

AI活用の構想策定と、AIエージェントやワークフローの構築

構築したAIエージェントやワークフロー

取り組みたい業務があるが、作る人がいない

③ 人材育成型

研修と、研修後の実践支援

AIを使いこなす社員のスキル

時間をかけてでも、社内で自走できる組織をつくりたい

④ 外部人材型

社外の専門人材による助言や推進の実務

進め方の判断材料と運用ルール

推進を担う人が社内にいない、または足りない

4つの類型を比較する際のポイントは、「契約後に社内に何が残るか?」という点です。

AXパートナーとの契約は、いずれ終わるか、範囲を縮める時が来ます。その時に社内に残るものが、自社が求めているものと一致していなければ、契約期間中は進んでいた取り組みが止まってしまう可能性があります。

そのため、AXパートナーを選定する際は、パートナーが「どのような形で」「何を提供するのか」を確認したうえで、「自社が求めているものに合致しているか」「自社に何が残るのか」を見極める必要があります。その見極めのために、4つの類型を知ることが重要になるのです。

「① システム+伴走型」は、システムの提供元が伴走も担うため、戦略で決めたことを実装する段階で提供元が分かれません。一方で、そのシステムを使い続けることが前提になるため、将来ほかの手段に切り替える可能性があるかは、選ぶ前に考えておく必要があります。

「② 戦略・実装型」は、自社の業務に合わせた個別の構築に向いています。既存のツールや他社のプラットフォームを活かして組み立てられる反面、構築したものを納品後に誰がメンテナンスしていくのか、契約の段階で決めておく必要があります。

「③ 人材育成型」は、仕組みや成果物ではなく、社員のスキルを社内に残す形です。社員によって習得の度合いに差が出るため、成果が業務に表れるまでには時間がかかりますが、契約が終わったあとも外部に頼り続けずに済むというメリットがあります。

ただし、研修だけで終わらせず、研修後に自分の業務で使う段階まで支援があるかどうかで、成果に差が出ます。

「④ 外部人材型」は、推進を担う人物を外から迎える形です。推進役がいない企業にとっては最も早く動き出せる手段ですが、契約が終わればその推進役もいなくなるため、判断の経緯や運用ルールを社内に記録として残しておくことが不可欠になります。

このように、どの類型が優れているかではなく、自社が契約の終わりに何を残したいかで選ぶべき類型が変わります。

代表的なAXパートナー9社を類型別に比較

ここでは、前項で解説した4つの類型にあてはまる代表的なAXパートナー9社を比較します。なお、類型は各社が主力とするAX支援サービスで分類しています。

◆AXパートナー9社の比較

企業/サービス

類型

主な支援内容

特徴

対象

① 株式会社Kiva「SamuraiAX」

システム+伴走型

AXワークフロー基盤と、戦略策定から定着までの伴走

Microsoft 365上で動き、Claude・Gemini・ChatGPTを使い分けられる

大手企業(業界の限定なし)

② 株式会社SQUEEZE「AXプラットフォーム」

システム+伴走型

ホテル運営システムと、企画から運用までの支援

ホテル運営の受託まで支援範囲に含む

宿泊・観光業界

③ 日本電気株式会社(NEC)「AI Platform Service」

システム+伴走型

100以上のAI機能を集約した基盤

伴走は別サービス(2〜4か月のプログラム)で提供。クラウドとオンプレミスの両方に対応

AIを活用した業務変革を目指す企業

④ 株式会社リグリットパートナーズ「AXコンサルティングサービス」

戦略・実装型

AX戦略策定、構築、定着支援

他社基盤(Workato)を採用し、エンジニアが現場に入って構築

製造・建設・金融など

⑤ 株式会社エクスプラザ「Explaza 生成AI Partner」

戦略・実装型

構想策定からPoC、AIエージェント開発、実装・運用まで

企業ごとの課題に合わせた個別開発

業界の限定なし

⑥ ファビュラ株式会社「AX Platform」

人材育成型

研修と独自指標による12ヶ月の組織変革プログラム

AI活用度を人事評価に組み込むところまで支援

経営者・管理職・現場社員

⑦ 株式会社AX「AX CAMP」

人材育成型

AIエージェント開発を学ぶ研修と、研修後の伴走

受講した社員が自分の業務でAIエージェントを作れるようになることを目指す

業界・規模の限定なし

⑧ クロスエモーション合同会社「AXコモン®」

外部人材型

月額制での情報提供、相談対応、ワークフロー設計支援

活用の段階に合わせた3プラン。上位プランは運用ルール策定や構築支援まで

経営者・AI推進担当者から全社推進まで(プランにより異なる)

⑨ Vision Base株式会社「となりのAX推進部長」

外部人材型

専門人材が準委任契約で現場に入り、戦略から定着まで担う

週1日からフルコミットまで稼働を選べ、実務まで担う

従業員80名以上の企業(プランにより異なる)

出典:Kiva、SQUEEZE、NEC(AI Platform Service、AIディスカバリープログラム+)、リグリットパートナーズ(プレスリリース)、エクスプラザ、Fabula、AX、クロスエモーション、Vision Base(プレスリリース)

上表で分かる通り、同じ類型の中でも各社の支援の形には違いがあります。また、各社を主力のサービスで4つの類型に分けましたが、実際には、主力とは別の類型にあたる支援を併せ持つ企業もあります。

例えば、人材育成型に分類した株式会社AXは、AX CAMPとは別にAIエージェントの開発事業も手がけています。外部人材型に分類したVision Baseも、同じ「となりのAIシリーズ」の中で、AIエージェントの構築や社内人材の育成プログラムを提供しています。システム+伴走型のSamuraiAXも、エンタープライズプランでは既存システムとの統合などの個社開発を専任チームが行います。

一方で、NECのように、システムと伴走をそれぞれ別のサービスとして提供している企業もあります。

そのため、類型で候補を絞ったあとは、主力の支援だけで自社の課題をまかなえるのか、足りない部分を同じ企業の別サービスで補えるのかを確認しておくと、あとから別のパートナーを探し直す手間を減らせます。

なお、SamuraiAX、SQUEEZE、Fabula、NEC、リグリットパートナーズの5社については、下記の記事で提供内容や伴走の中身をさらに詳しく紹介していますので、こちらもあわせてご覧ください。

関連記事:システムと伴走が一体の「AXプラットフォーム5社」を比較

AXパートナーを選ぶ際の4つのポイント

ここでは、類型で候補を絞ったあとに、AXパートナーを比べるための4つのポイントについて、比べ方と注意点を解説します。

ポイント① 支援の範囲は自社が担う範囲を先に決めてから比べる

AXの取り組みは、以下のような工程に分かれます。

◆AXの基本的な工程

1. 戦略を立てる

2. 仕組みを作る

3. 現場に定着させる

4. 運用しながら改善する

しかし、AXパートナーによって担う工程は異なるため、各社の提案をそのまま並べて比べても、範囲が違っていれば比べようがありません。

そのため、まずは自社で担える工程と、外部に任せたい工程を社内で整理しておきます。そのうえで、任せたい工程を各社がどこまでカバーしているかを見ることで、提案の違いが明確になります。

また、前項で述べたように、主力とは別のサービスで足りない工程を補える企業もあるため、1社でまかなうのか、複数の企業を組み合わせるのかも、この段階で考えておくと判断がぶれません。

ポイント② 契約形態が「請負」か「準委任」かを確認する

契約形態において、「請負」は、仕事を完成させることを約束する契約で、報酬は仕事の結果に対して支払われます(民法第632条)。

一方の「準委任」は、法律行為ではない事務の処理を任せる契約で(民法第656条)、受ける側が負うのは仕事を完成させる義務ではなく、業務を適切に進める義務です。

AXパートナーとの契約は、多くの場合「業務委託契約」ですが、民法上は主に請負と準委任のどちらかにあたります。

つまり、同じ「AIエージェントの構築」を頼む場合でも、請負なら完成したものに対して報酬を払い、準委任なら作業の遂行に対して報酬を払うことになります。思ったものができあがらなかったときの扱いが、契約形態によって変わるということです。

なお、2020年の民法改正で、準委任でも成果に対して報酬を払う形が定められています(民法第648条の2)。準委任契約であることを明示しているAXパートナーもあるため、提案を受けた段階で、どちらの形で、何に対して報酬を払うのかを確認しておくことが重要です。

出典:e-Gov法令検索「民法」

ポイント③ 費用は単位と期間をそろえてから比べる

AXパートナーの費用は、提示のされ方がそろっているわけではありません。各社によって、月額制のもの、受講者1名あたりで設定されているもの、個別の見積もりになるものなどがあります。

契約期間もさまざまで、2〜4か月で区切るものや、12ヶ月のプログラムになっているもの、あるいは最短3ヶ月から3ヶ月ごとに更新するものなどがあります。

そのため、金額だけを並べると安く見えたほうが、期間を延ばすと高くなるということが起こります。比べる際は、自社が想定する期間(例えば1年など)に換算した総額でそろえるのが確実です。

あわせて、途中で範囲を縮めたり解約したりする場合の条件も確認しておくと、「契約が終わった時に自社に何が残るか?」を見据えた判断ができます。

ポイント④業界や業務への理解は提案の中身で確かめる

AIの使い方が同じでも、業界や業務が違えば、どこにAIを組み込むべきかは変わります。そのため、自社の業務を理解したうえで提案しているかどうかは、成果に大きく影響します。

確かめ方は以下の2つです。

◆業界や業務への理解の確かめ方

1. 同じ業界や似た業務での支援経験があるか

2. 提案の前に自社の業務を聞き取る工程があるか

提案書が自社の業務の具体的な話ではなく、どの企業にも当てはまる一般論で終わっている場合は、理解が不十分な可能性があります。

「それはAIでやらなくていい」と言ってくれるパートナーは信頼できる

商談の場で、AXパートナーが自社の業務について「それもAIでできます」と答え続けるとしたら、一度、その提案内容を慎重に見直す必要があるかもしれません。

AIは、使い方次第で多くの業務に組み込めます。そのため、売る側にとっては「できます」と答えるほうが簡単で、商談も前に進みます。

しかし、実際にAIを業務に組み込んでいくと、AIに任せるより今のやり方のほうが早い業務や、そもそも業務そのものをなくしたほうがいい作業が必ず出てきます。

そのような業務までAIの対象にすると、費用も手間もかかるわりに成果が出ず、現場には「AIは使えない」という印象だけが残りやすくなります。

良いAXパートナーかどうかは、「その業務はAIでやらなくていいと思います」と言えるかどうかに表れると筆者は考えます。なぜなら、相手が自社の業務をきちんと見たうえで、自社の成果を優先して考えている証拠といえるからです。

もし商談で迷ったときは、「この業務の中で、AIに任せないほうがいい部分はありますか」と聞いてみましょう。すぐに具体的な答えが返ってくる相手であれば、契約後、欠点や弱点についても率直に話し合えるパートナーになるはずです。

まとめ

AXパートナーの選定で大切なのは、契約が終わったときに社内に何を残したいのか?を先に決めておくことです。

AXは、AIを導入して終わりではなく、業務の変化に合わせて見直し続ける取り組みです。そのため、パートナーとの契約期間中にどれだけ進んだかよりも、契約後に自社だけで取り組みを続けられるかどうかが、最終的な成果に影響します。

まずは、本記事で解説した4つの類型で候補を絞り、チェックリストを活用して各社に同じ質問を投げかけ、回答を並べて確かめることで、自社に合ったAXパートナーを選ぶことができるはずです。

もし、自社のAXの推進を支援するパートナーをお探しなら、株式会社Kivaが提供するシステム+伴走型のAXプラットフォーム「SamuraiAX(サムライ エーエックス)」を、他社とともにご検討ください。

AX顧問とAXスペシャリストが、業務の棚卸しからロードマップ策定、実装、定着までを伴走し、契約後も社内で業務がAI前提で動き続ける状態をつくることを目指しています。

プラットフォームには、企業がすでに使っているMicrosoft 365を土台に、Claude、Gemini、ChatGPTなどのAIモデルを連携させて業務をワークフロー化する仕組みを備えています。

SamuraiAXの詳細については、ぜひ下記の公式サイトからお問い合わせ・資料請求をご利用ください。

SamuraiAX 公式サイト